ダヴィド・ルイス、スアレスに惨敗!強力3トップに翻弄され、ホーム3失点で消えたパリの灯

プレミアリーグ勢が全滅してしまったため、チャンピオンズリーグ準々決勝を観ようというモチベーションが落ちていたのですが、結局、試合が始まると引き込まれるように観てしまいます。スコアレスドローに終わった昨日のマドリード・ダービーは、シメオネ監督のほうが満足度は高かったのではないでしょうか。対レアル・マドリード4勝3分け。今季7回めの対戦もこれまで同様負けずに相手の苦手意識をさらに煽り、しかもアウェイゴールをゼロに抑えたので、セカンドレグの戦い方が明確になりました。

次戦のアトレティコ・マドリードは開始から積極的にゴールを狙いにいき、先制点を奪えたら堅守で時間を進めるといったゲーム運びをするでしょう。レアル・マドリードに先に点を獲られても、追いつけば自分たちの勝ち抜けなので、さほど動揺せずにゲームを進められるはずです。一方のレアル・マドリードは、0-1となったら相当焦るはず。アウェイで引き分けたアンチェロッティ監督が一見、有利にみえますが、第2戦の方針がシンプルなシメオネ監督が勝ち抜けを決めるのではないかと予想します。

さて、本日はポルトVSバイエルン・ミュンヘンと、パリ・サンジェルマンVSバルセロナです。2月に本ブログで書いたとおり、私のチャンピオンズリーグ優勝予想の本命はバイエルンなのですが、ここにきて負傷者が続出し、雲行きが怪しくなってまいりました。グアルディオラ監督のやりくりに興味があり、そちらを観ようと直前まで決めていたものの、プレミアリーグ首位クラブを破ったパリとプレミアリーグ昨季王者を子ども扱いしたバルサがどんなサッカーをするのかが気になって、急遽方針変更。マンチェスター・ユナイテッドがバルセロナにチャンピオンズリーグファイナルで2回やられたことが忘れられず、彼らの試合では自動的に相手チームを応援するのが常ですが、8分にマチュイディからのグラウンダーをフリーのパストーレが空振りした後は、バルサがホームのパリを圧倒。13分にはドライブをかけたメッシのシュートがポストの外側を叩き、イブラヒモヴィッチが出場停止のパリはトップのカバーニまで自陣に下がって守っています。

18分のネイマールの先制ゴールは、ブスケツが敵陣でのボール奪取に成功してからのスピーディーなショートカウンター。中でメッシがフリーでパスを受けると、サイドに張っていたネイマールが斜めに走り込んでDFラインの裏に入り、10番の完璧なスルーパスでGKシリグと1対1、最後は右足インサイド。痛恨の一撃を喰らった直後にチアゴ・シウヴァが負傷リタイアとなり、病み上がりのダヴィド・ルイスを早期に投入せざるをえなくなったのはブラン監督にとって大きな誤算でしょう。カウンターに徹するパリは28分、左のラベッシを起点に中でカバーニがフリーになるチャンスをつかみますが、マスチェラーノの必死のディフェンスにつぶされ、同点ならず。何度か縦1本からチャンスをもらっていたカバーニは、どうも足にボールがついておらず、シュートに持ち込むことができません。

ダヴィド・ルイスがスアレスにボールを奪われループシュートを打たれた際に、GKシリグが左肩を痛めるなど、パリの最終ラインは満身創痍。バルサには以前の美しいパスワークはないものの、ハーフライン付近での厳しいチェックと直線的な速攻は、ティキタカ全盛期と変わらず脅威です。ホームで負けるわけにはいかないパリは、前半は決まらなかったカウンターを残り45分で成就させることができるでしょうか。

 後半、パリの攻勢。48分、パストーレのミドルは難しいバウンドをシュテーゲンがセーブ。ラビオの2本の左足シュートはマスチェラーノとGKの堅い守りにゴールならず。52分、イニエスタが腰を痛めて動けなくなり、ルイス・エンリケ監督はシャビを投入します。パリの再三のカウンターはカバーニのスローなプレイで止まってしまい、62分にはメッシとネイマールの逆襲を許すと、ラストパスさえ通れば追加点というピンチに追い込まれます。すると65分、右サイドでパスを受けたのはスアレス。ダヴィド・ルイスとの「元プレミアリーグ対決」をあっさり制して中に持ち込んだスアレスは、マルキーニョスとマクスウェルを次々とかわして無理やりねじ込むようなシュート。シリグが触ったもののボールはゴールラインを割り、ついに0-2。このまま終われば、パリは昨季同様8強で去ることがほぼ決まります。

2点のビハインドを背負いながら、ゴールが遠いリーグアン王者。スタンドで息を詰めて見守るサポーターの願い虚しく、80分、パリを絶望させる3点めが決まります。ワンツーで中央に入ってきたスアレス。対峙したダヴィド・ルイスは屈辱的な股抜きで置いていかれ、右のサイドネットに一直線に突き刺さったシュートにシリグはお手上げです。直後にファン・デル・ウィールのシュートをキックミスしたマテューがオウンゴールを献上して1-3となりますが、これだけではアウェイで3ゴールを決めたバルサの絶対的優位は揺るぎません。2点めを決められた後のダヴィド・ルイスは、タイムアップの笛が鳴るまでずっと敗者の顔。マッチアップでの惨敗はショックを引きずりそうです。

どちらが勝ち抜けるかにしか興味がない方は、セカンドレグを観る必要はないでしょう。強いバルセロナ、文句なしスアレス。昨季のリヴァプールがプレミアリーグ優勝寸前までいった理由を、あらためて確認させられたようなゲームでした。

こちらはアウェイながら、バイエルン・ミュンヘンがポルトに3-1で敗れたようですね。GKレイナとバトュシュトゥバーしか使えそうな控え選手がいなかったバイエルン、大ピンチです。ホームで3点差以上、あるいは2-0のクリーンシートは、ジャクソン・マルティネス、クアレスマ、テージョ、トレス、エクトル・エレーラなど曲者揃いのポルト相手に簡単にできることではありません。(ルイス・スアレス 写真著作者/Ailura)


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欧州、全滅!プレミアリーグの急激な凋落・4つの仮説(4)単一の戦術、国内選手の伸び悩み

前稿「欧州、全滅!プレミアリーグの急激な凋落・4つの仮説(3)やっぱりタイトなスケジュール」より続きます。

(4)単一の戦術、国内選手の伸び悩み
最後に、戦術的なお話を少々と、イングランド人選手について触れたいと思います。私は、何しろプレミアリーグ観戦が忙しく、他国のクラブのゲームはチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグが主で、ドイツを除いて国内リーグまで深く見きれているわけではありません。ですので、欧州全体の戦術的な分析は専門家におまかせするしかありませんが、ここでは欧州のコンペティションを観ていて思うところを語りつつ、プレミアリーグのクラブにおいて気になることを挙げてみたいと思います。

今季が始まった頃、プレミアリーグ経験者のシャビ・アロンソが、「複数のフォーメーションをこなせないとチャンピオンズリーグでは勝てない」とコメントしていました。王者レアル・マドリードとグアルディオラのサッカーの裏側まで知る彼の言葉には重みがあります。これに加えて、欧州の大会を観て私が思うのは、「カウンターができて、カウンターに対して守れるチームでないと、欧州では勝てない」ということです。相手を見て選ぶ複数の戦術と、ショート、ロングそれぞれのカウンターの攻防。プレミアリーグで、チェルシー以外にこれらができるクラブがあるでしょうか。

マンチェスター・シティと戦ったバルセロナは、以前のポゼッションサッカーのチームではなく、明らかにカウンターのチームにモデルチェンジしていました。ただし、最終ラインで奪うというリスクは最小限にとどめ、ひとつ前の中盤でカットして一気に攻め込むショートカウンターが中心。もはやティキタカではないものの、「奪われた瞬間に取り返す」というこれまでの戦術は健在です。彼らは、「中盤でボールを支配するため」ではなく、「中盤で奪って素早く攻めるため」に、人数も含めた優位にこだわっていたのではないかと思います。一世を風靡したポゼッションサッカーをトレースできるのは、グアルディオラという卓越した戦術家と、守備に長けた前線の選手を抱えたバイエルン・ミュンヘンぐらいでしょう。しかし、彼らとて戦い方は複数あり、今季はわざとサイドを広く取ってワイドなアタックを仕掛け、ゴール前に固まった相手に横のすき間を作らせるような攻め方もしています。

翻ってプレミアリーグ勢は、戦い方がひとつしかないクラブも多く、相手に合わせた戦術選択ができなかったりします。結果的には終了直前の3点めが致命傷でしたが、モナコ戦のアーセナルにおける最大の失敗は、カウンターからベルバトフに決められた2点めのシーンでしょう。53分という早い時間に、敵陣での無謀なスライディングをかわされて創られた2対1の形は、チェルシーに大敗したゲームを思い出させる過去の失敗のパターン。モナコはカウンターにしか活路を見出せず、後ろさえケアしておけば、ゴールを奪えたかどうかはわからないものの、失点を重ねなくても済んだと思われます。

バルサと戦ったマンチェスター・シティも、中盤右サイドに構えたメッシを起点に最後は左から崩すというバルセロナ定番の形に対応できず、GKジョー・ハートの大当たりでしかカウンターを止められない状態。私は、「最終ラインを強力FW対策で3枚にして、サバレタをサイドMF、アルバの上がりを抑えるべくダヴィド・シルヴァを右FWに置いた3-4-3でバルサの左に対抗したらおもしろい(いや、うまくいくかどうかはわかりませんよ)」などと妄想を膨らませておりましたが、ペジェグリーニ監督のサッカーは後ろが4枚は確定。前をアグエロひとりにするのかジェコやボニーを入れるのか、ヤヤ・トゥレを前にするか後ろにするか、便利なミルナーをどこで活かすか、ぐらいのチョイスしかなく、バルセロナの特徴的な攻撃への対策はありませんでした。

このうえは、バイエルンとバルセロナの試合を観てみたいですね。どちらが勝つにせよ、グアルディオラ監督は何らかの解を見せてくれるのではないかと思います。いつものバイエルンの戦い方とは違うのに、いつものバイエルンとクオリティが変わらない極上のバルサ対策を。

1月にマンチェスター・シティに勝ったカウンター主体の新アーセナルを観て、チャンピオンズリーグが楽しみ、このスタイルを第2の形として熟成させていってほしいとワクワクしていたのですが、ヴェンゲル監督にそこまでの意志と覚悟はなかったようです。アーセナルやマン・シティが「カウンターができて、カウンターを封じられる複数の戦い方を持ったチーム」になれなければ、敵地でこそ貴重なアウェイゴールを奪おうと攻めてくる現在のチャンピオンズリーグで、ホームゲームをクリーンシートで勝ち切るのは難しいのではないかと思います。プレミアリーグにおいて、いくつかのチームのサッカーは、「ひと昔前の、部分的にバルセロナの香りがするポゼッションサッカー。戦術が単一なので相手に攻め立てられると混乱するのみ」となってはいないでしょうか。

最後にもうひとつ、気になるのはイングランド人選手のレベルです。ワールドカップを勝ったドイツと、それまでチャンピオンで個別の選手のクオリティは依然として高いスペインは、ワールドクラスの代表レギュラー選手が国内のブランドクラブで活躍し、一部のトップとその下の選手が海外、例えばプレミアリーグに流れてくるという図式。一定の数のホームグロウン選手をリストに入れないといけないプレミアリーグのクラブにとって、イングランド人の次世代ワールドクラス候補が少ないのは由々しき問題でしょう。代表レギュラークラスのDF、ジャギエルカとレイトン・ベインズが揃っているエヴァートンが、キエフに5点獲られて負けるのをみるとがっかりします。クオリティの低い国内選手と、トップクラスの国の二番手以下を集めて欧州のトップになろうと思えば、相当な戦術と若手の目利きが求められます。

プレミアリーグが欧州で強かった頃は、ルーニー、リオ・ファーディナンド、ランパード、テリー、ジェラード、アシュリー・コールなど、要所にスケールの大きい選手がいました。今のイングランドで、将来の大器として期待できそうなのは、スタリッジ、スターリング、ヘンダーソン、ロス・バークリー、ハリー・ケインぐらいでしょうか。どうしたウィルシャー、ウォルコット。こればかりは、各クラブの育成とFAの取り組みに期待するしかありませんが、国の代表の強さとリーグのレベルは、一定連動するものだと思います。

ずいぶん長くなりましたが、以上4点が、私が考えるプレミアリーグ凋落の理由です。このところ厳しいのは事実ですが、満員のスタジアムとテレビ放映権料、スポンサーからの資金が潤沢にあるのはプレミアリーグの希望であり、以前のセリエAのような落ち方や、長期的な低迷はないでしょう。とはいえ、プレミアリーグファンとしては、チャンピオンズリーグの椅子が3つになるのを見たくないものです。来季はがんばれ、としかいえませんが。いや、本当にがんばってほしいです。


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欧州、全滅!プレミアリーグの急激な凋落・4つの仮説(3)やっぱりタイトなスケジュール

前稿「欧州、全滅!プレミアリーグの急激な凋落・4つの仮説(2)欧州に本気ではないプレミアリーグ勢」より続きます。

(3)やっぱりタイトなスケジュール
このところのプレミアリーグを観ていて気になっているのは、「プレミアリーグ移籍1年めの選手の後半戦失速」です。落ちやすいのは、来て早々にフィットして活躍し、連日ゲームに出ている選手。昨季の代表はメスト・エジル。今季はセインツのコンビ、グラツィアーノ・ペッレとタディッチ、アレクシス・サンチェス、そしてチェルシーのジエゴ・コスタと久しぶりに復帰したセスクです。

今季プレミアリーグで22試合18ゴールと得点王レースのトップを走るジエゴ・コスタは、3試合の出場停止から戻った2月以降は、5試合で1ゴールのみとペースダウンしています。1ヵ月を超えるような負傷があった選手や、休み休み使われている選手はともかく、大半の試合に出ている1年めの選手が年が明けてからトップフォームを取り戻せないケースが散見され、ウインターブレークがなく逆に試合数が増える年末年始の過酷なスケジュールが、身体的な疲労と精神的なストレスにつながっているのではないかと心配になります。

この傾向は1年めの選手だけでなく、長年プレミアリーグで働いている選手、ひいてはチームも影響を受けるケースがあるように思います。復帰した負傷者が多く、コンディションが上がっている選手もいるアーセナルはひとまず置いておいて、チェルシーとマンチェスター・シティにおける今回のチャンピオンズリーグ前後の戦績を確認してみましょう。

チェルシー
2月11日(H)エヴァートン 1-0
2月17日(A)パリSG    1-1
2月21日(H)バーンリー  1-1
3月1日 (N)トッテナム   2-0
3月4日 (A)ウェストハム  1-0
3月11日(H)パリSG    2-2
3月17日(H)サウサンプトン1-1
※スコアはすべてチェルシーから見た数字です

マンチェスター・シティ
2月21日(H)ニューカッスル5-0
2月24日(H)バルセロナ  1-2
2月27日(A)リヴァプール 1-2
3月4日 (H)レスター   2-0
3月14日(A)バーンリー  0-1
3月17日(A)バルセロナ  0-1
※スコアはすべてマンチェスター・シティから見た数字です 

チェルシーは明らかに得点力に翳りが見え、1試合消化が少ないながらプレミアリーグ最多ゴールの座をマンチェスター・シティに奪われており、1月には1ヵ月勝利なしという停滞期間があったマン・シティは、未だ取りこぼしが止まっていません。バイエルン・ミュンヘンとローマを連破して逆転でチャンピオンズリーグのグループステージ突破を決めた頃のマンチェスター・シティは、前後のプレミアリーグでも5連勝。昨季王者と今季首位は、今年に入って明らかにコンディションを落としていました。休みを増やせばシワ寄せもあるので「ウインターブレイクがあればすべてが好転する」という単純な問題ではないのは確かですが、2週間でも休みがあれば、トップチームが実力を発揮してサポーターを湧かせられるケースは増えるのではないでしょうか。

ウインターブレーク以外では、以下のような改善も検討の余地があるでしょう。
・FAカップの再試合廃止、プレミアリーグ勢の12月合流(現在は1月に2試合)
・FAカップの前年ベスト8はシードで4回戦から、ベスト4は5回戦から登場
・キャピタルワンカップ再試合と準決勝ホーム&アウェイの廃止、準決勝&決勝の時期見直し
・キャピタルワンカップの前年ベスト4は4回戦から登場
・(キャピタルワンカップの廃止)

キャピタルワンカップの廃止については、一時期私も賛成派だったのですが、最近は悩ましいと思うようになりました。近年、プレミアリーグのトップクラブが使えるお金が増えたため、外国人選手獲得と育成強化により投資するようになり、イングランドの下部リーグに所属するクラブの選手が売れなくなって、育成予算を縮小するという話が続出しているそうです。プレミアリーグのクラブが街に来ることが下部リーグの大事な収入源となっているのであれば、キャピタルワンカップを一気にたたむのはマイナスのほうが大きいかもしれません。元より、伝統を重んじるイギリス人(行くとわかりますが、この感覚は強烈です)が、大胆な変革をするとも思えません。スケジュール改善でしばらく様子見というのが現実的でしょう。

他国と比較して云々ではなく、現状の問題をひとつひとつ解決しなければ、アドバンテージを失い戦略・戦術的にも欧州トップから後れをとっているプレミアリーグのクラブはさらに厳しくなる、という危機感です。最低限、実現してほしいのは、参加するクラブが限りなくベストな状態で欧州のステージに向かうことです。

そういえば、リヴァプールのロジャース監督は、ヨーロッパリーグのラウンド16でヘンダーソンを休ませたのに、前週のFAカップ、クリスタル・パレス戦では堂々のベストメンバーで戦っておりました。ELがマンチェスター・シティ戦の3日前だったというのはわかるものの、チャンピオンズリーグの際も直前の国内カップでメンバーを揃えていたので、ロジャースさんの「欧州の優先順位が国内カップよりも低い感」が拭えません。暴論ですが、本気で欧州勝ちたいなら、国内カップは思いっきりメンバー落として、「勝ったらラッキー、運よくベスト4まで行けたらそこから本気でやります」でもいいんですよね。サポーターは怒りそうですが。何といってもFAカップは世界最古のサッカー大会、イングランドが誇る伝統ですから。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。次稿が最後です。「欧州、全滅!プレミアリーグの急激な凋落・4つの仮説(4)単一の戦術、国内選手の伸び悩み」に続きます。


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欧州、全滅!プレミアリーグの急激な凋落・4つの仮説(2)欧州に本気ではないプレミアリーグ勢

前稿「欧州、全滅!プレミアリーグの急激な凋落・4つの仮説(1)アドバンテージの喪失」より続きます。

(2)欧州に本気ではないプレミアリーグ勢
はっきり申し上げて、プレミアリーグ勢はチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグを本気で勝とうとしていないのではないかと思います。優勝できると考え、それを行動で示しているのはチェルシーのモウリーニョ監督ぐらいではないでしょうか。アーセナル、リヴァプール、そして今やマンチェスター・ユナイテッドも、チャンピオンズリーグで勝つよりプレミアリーグで4位になるほうを優先しているようにみえます。実際、経営的には間違いなくそうでしょう。優勝できるなら別ですが、スペインの2強とバイエルン・ミュンヘンが強すぎる今は、がんばってもベスト4、普通にやれば8強止まり。ラウンド16敗退とベスト8の差と、プレミアリーグ出場権の有無の差を比べれば、圧倒的に後者の差のほうがシビアです。

ではなぜ、つい数年前までは決勝に顔を出すのが当たり前だったプレミアリーグのクラブは、内向きになってしまったのでしょうか。私が考える最大のポイントは、「マンチェスター・シティが強くなったから」。今までは、「マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、アーセナルは当確、リヴァプールがコケたらトッテナム」という3強プラス1の時代。これは、スペインのバルサとマドリード勢、ドイツはドルトムントが自滅しなければバイエルンとの2強+2、イタリアもユヴェントス当確でローマも常連と、他国は現在も似たような構図です。トップクラブは優勝を争うものであり、チャンピオンズリーグの出場権は、おのずとついてくるものなのです。

しかしプレミアリーグは、「遅れてきた5番めのトップクラブ」マンチェスター・シティの殴り込みによって、完全なる椅子取りゲームに突入しました。時を同じくして、ベイル資金もあってじわじわと食い込んできたトッテナムを含めると、今や6分の4。ヴェンゲル監督は、チャンピオンズリーグ決勝でPK戦でバイエルンに負けるなどというクラブレコードレベルの結果を欧州で出しても、プレミアリーグで6位ならば、翌シーズンはひたすら財布のヒモを締めて国内で戦うしかなくなるわけです。

しかもプレミアリーグは、テレビ放映権の恩恵を受け、資金がある中堅や下位クラブにも相当な選手がいます。ソング、ボージャン・クルキッチ、カンビアッソは、ついこの間まで欧州のトップレベルで戦っていた選手。下位同士で戦った場合は、自国選手の質の差もあってプレミアリーグはスペインに負けるかもしれませんが、こと上位に対して物おじせず、嫌がるサッカーができるという点においては、プレミアリーグは欧州トップを争うでしょう。ライバルが多くて負けられず、下位に対しても思い切った冒険ができない状況。プレミアリーグ勢は、どの試合も「いつものサッカー」「主力投入」を余儀なくされ、第2・第3の戦術開発や若手抜擢が後回しになりがちなのだと思われます。

今季、いちばん長期的な視野に立ってチームを作っていたのはトッテナムのポチェッティーノ監督で、試合ごとにスタメンを総取り替えする勢いで「次世代の若手を育て、複数のコンペティションをローテーションで戦えるチームへ」という試みに秋から取り組んでいました。ハリー・ケインやライアン・メイソンが成長し、チェルシーから5点を奪うようなチームになったのは監督の功績だと思いますが、彼とて、本丸は明確にプレミアリーグ。「ヨーロッパリーグを失ってもいいから」という但し書き付きだったのは間違いありません。

今シーズンの欧州でいちばん残念だった試合は、パリに負けたチェルシーでもなく、モナコ相手に失敗したエミレーツのガナーズでもなく、11月4日のサンチャゴ・ベルナベウ、レアル・マドリードに1-0で負けたリヴァプールのゲームでした。欧州のトップとの距離感とスペイン人に囲まれたアウェイの空気を肌で知り、経験を積める貴重な機会。ここまでレアル・マドリードは3連勝でトップ通過はほぼ確定でした。リヴァプールは直前のアンフィールドで0-3と手もなくひねられており、だからこそ相手が緩んでドローに持ち込める可能性があった大事なゲーム。しかし、この日のスタメンには、ジェラード、コウチーニョ、ヘンダーソン、スターリングの名前がありませんでした。1-0は惜敗ではなく、戦わなかったレッズと流して終わらせたマドリードの暗黙の了解のような結果。リヴァプールは、この1ヵ月後にチャンピンズリーグ敗退が決まりました。

前週のミッドウィークに行われたキャピタルワンカップのスウォンジー戦にはコウチーニョとヘンダーソンが出て勝っており、当時は「ロジャース監督、手を抜く試合を間違えていませんか」と思ったものでした。リヴァプールが今季、欧州で敗れた最大の理由は、ポストSASのチーム作りが遅れてバーゼルに勝てなかったことと、マンチェスター・シティ戦を重視してベシクタシュ戦でメンバーを落としたことだという認識ですが、こういった欧州軽視の姿勢が、「欧州を勝とうとしているチームに行きたい」という選手離脱の理由につながってしまうのではないかと心配です。

さて、「欧州に本気ではない」といえば、最後にチェルシーについても触れたいと思います。冒頭でも述べましたが、現在のプレミアリーグの監督で、いちばん欧州を知り、勝とうとしているのはモウリーニョ監督だと思います。レアル・マドリードからやってきて2年め。昨季まで4年連続チャンピオンズリーグのベスト4。しかし、世界で5本の指に入る監督は、初年度が無冠だったこともあり、「イングランドですべてを手にすることの難しさ」のほうを軽視していたのかもしれません。パリに負けたモウリーニョ監督の失敗(あえてそういいましょう)は、「キャピタルワンカップを本気で勝ちにいってしまったこと」ではないでしょうか。

クリスマスまわりでウインターブレイクをとったパリに対して、チェルシーの12月はキャピタルワンカップ、チャンピオンズリーグを含む9試合。1月にはプレミアリーグ3試合に加えて、FAカップとキャピタルワンカップ準決勝で4試合も戦っており、計7試合。しかもキャピタルワンカップは、リヴァプールとの死闘で延長戦付きです。1月17日、スウォンジーとのアウェイ戦で0-5と大勝したチェルシーは、以降の2ヵ月、2点差をつけて勝った試合はキャピタルワンカップ決勝のトッテナム戦のみ。90分で2点を奪った試合は、これに加えて2月頭のアストン・ヴィラ戦だけです。ジエゴ・コスタとセスクにキレがなくなったチェルシーは、パリと戦ったスタンフォード・ブリッジでは秋に見せた最強チームではなくなっていました。パリとの試合後、「相手が10人になってよりプレッシャーを感じてしまった」とモウリーニョ監督が語っておりましたが、その源は、自らを蝕んでいた慢性的な疲労だったのではないかと思います。

モウリーニョ監督は、プレミアリーグ開幕後、最初に獲れるタイトルであるキャピタルワンカップで勝ち、まずは2年連続無冠という屈辱を回避したい気持ちもあったのかもしれません。カップ戦も全力で戦えという文化がイングランドにあるのは重々承知ながら、12月から3月にかけての4試合を若手のみで戦っていれば、チャンピオンズリーグで別のチームのような寂しい姿を見せなくてもよかったのではないかと思います。ここ2ヵ月のチェルシーの姿をつぶさに見ていれば、現在のペースダウンは年末年始から徐々に始まっていたものだということを感じていただけたでしょう。日程の話は、次稿であらためて書かせていただきます。

次稿、「欧州、全滅!プレミアリーグの急激な凋落・4つの仮説(3)やっぱりタイトなスケジュール」に続きます。


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サッカー観戦
自己紹介:
プレミアリーグがとりわけ好きなのは間違いありませんが、チャンピオンシップ、セリエA、ブンデスリーガ、リーガエスパニョーラ、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグはもちろん、Jリーグ、なでしこリーグ、高校サッカーまで何でも観ます。今年、特に活躍を期待している選手は、ダヴィド・デ・ヘア、マーカス・ラシュフォード、メスト・エジル、モー・サラー、エリクセン、ムヒタリアン、岡崎慎司、吉田麻也です。

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